iPhoneはその高性能さと洗練されたデザインで、長年にわたり多くのユーザーに支持されてきたスマートフォンです。
しかし、年々高額化する端末価格の影響もあり、「できるだけ長く使いたい」と考える人が増えているのも事実です。
中には「10年くらい使い続けられたらかなりお得なのでは?」と期待する声もありますが、果たしてそれは現実的なのでしょうか。
この記事では、iPhoneを10年という長期にわたって使用することの可否を検証し、その過程で直面しがちなトラブルや注意点について詳しく解説します。
長く使えば使うほど本当にコストパフォーマンスが高くなるのか、実情をしっかり把握しておきましょう。
iPhoneは10年間使用可能?理論上は可能でも現実は厳しい面も
iPhoneは高精度で製造されており、筐体やパーツの品質が高いことから、バッテリーの交換やディスプレイの修理といった基本的なメンテナンスを怠らなければ、10年間動作することは物理的には不可能ではありません。
実際、iPhone 6やiPhone 7を2024年になっても使用しているユーザーは一定数存在しています。
しかし、動作することと快適に使えることはまったく別問題です。
年月の経過とともにハードウェアの性能は陳腐化し、OSやアプリのサポートも徐々に終了していきます。
対応するアプリが使えなかったり、動作が遅くなったりと、日常使用において多くの制約が生まれてくるのです。
サブ機や予備端末、あるいは子ども用など、用途を限定して使うのであれば10年使用も現実味がありますが、メインスマートフォンとして10年間ストレスなく使い続けるのはかなりハードルが高いと言えるでしょう。
iPhoneを長期間使うことによって起こる5つのリスク
表面上は「長く使えば節約になる」と思われがちですが、iPhoneを10年間使い続けるとさまざまな問題が積み重なり、むしろ効率が悪くなるケースもあります。
ここでは代表的な5つのリスクについて見ていきましょう。
1. iOSのサポートが打ち切られる
Appleは各モデルのiPhoneに対し、基本的に5〜6年程度のiOSアップデートサポートを提供しています。
それを過ぎると、OS自体のアップデートが行われなくなり、新機能やバグ修正、セキュリティパッチの提供も打ち切られます。
例外的に深刻な脆弱性については一時的なセキュリティ更新が実施されることもありますが、それでもサポート外の状態で使い続けるのは危険です。
ウイルス感染や個人情報の漏洩など、セキュリティリスクが確実に高まります。
Appleも公式に「安全に利用するためには最新のソフトウェアを維持することが非常に重要」と案内しているように、古いOSのまま使い続けることは基本的に推奨されていません。
2. アプリが非対応となり、動作にも支障が出る
iOSのバージョンが古くなると、App Storeにある多くのアプリが対応を打ち切る傾向があります。
とくに、LINEやYouTube、地図アプリ、金融系アプリなど日常的に使用頻度の高いものほど新しいOSに依存しているため、古い端末では使用できなくなることが増えてきます。
また、最近のアプリは処理能力やメモリを多く消費する設計がなされているため、古い端末では起動に時間がかかる、途中で強制終了する、フリーズするといった不具合が多発します。
スマホとしての機能を満たさなくなれば、いくら使い続けても意味がなくなってしまいます。
3. バッテリーの劣化は避けられず、複数回の交換が前提に
iPhoneに搭載されているリチウムイオンバッテリーは消耗品であり、使用とともに性能が確実に落ちていきます。
Appleによれば、フル充電を500回繰り返すとバッテリー容量は約80%まで低下する仕様となっています。
10年使えば、おそらく2〜3回のバッテリー交換は必要になるでしょう。
バッテリー交換自体は可能でも、AppleCareの保証外であれば毎回費用がかかり、手間も伴います。放置すれば充電の減りが早くなり、外出中に使えなくなるリスクもあるため、実質的に「快適なスマホ」とは言えなくなってしまいます。
4. 処理性能の陳腐化でストレスが増大する
スマートフォンのCPUやGPUは2〜3年ごとに大幅な性能向上が見られ、10年前の端末と最新機種の間には大きな差が生じます。
たとえば、2023年のiPhone 15 Proに搭載されたA17 Proチップは、2013年のiPhone 5sのA7チップと比べると、処理速度や電力効率において数倍以上の進化を遂げています。
この差は、アプリの起動速度、Webページの表示速度、写真の編集など、日常の操作すべてにおいて体感できるほどです。
古い機種を使い続けるほど「遅い」「反応しない」といった不満が増し、快適性は著しく低下します。
5. 修理用部品が供給終了となり、正規対応が受けられない
Appleでは、販売終了から5年以上が経過した製品を「ビンテージ製品」、7年以上経過したものを「オブソリート製品」と定義しており、この区分に分類されると正規の修理サポートは受けられなくなります。
たとえばiPhone 6は2024年にオブソリート扱いとなり、Apple Storeや正規サービスプロバイダでの修理は不可となりました。
画面のひび割れやボタンの故障といったトラブルが起きても、正規の部品が使えず、サードパーティ修理や買い替えを検討するしかないのです。
実際に10年使い続けている人もいるが、一般的には非推奨
現実として、10年近く同じiPhoneを使い続けている人が存在するのは事実です。
しかし、そのほとんどは音楽再生用、目覚まし時計、サブ回線用など用途を限定したものであり、日常的に使うメイン端末としての運用ではありません。
長期間の使用にはどうしてもバッテリー劣化やOS非対応、アプリの互換性喪失などの問題が積み重なっていきます。
定期的なバッテリー交換やメンテナンスで延命は可能とはいえ、その手間とコスト、利便性を天秤にかけたときに、果たして本当に「お得」と言えるのかをよく考える必要があります。
まとめ|寿命の延長を目的にせず、使用感を基準にした判断を
確かに、iPhoneは耐久性の高い優れたスマートフォンであり、正しくメンテナンスすれば10年近く使用できるポテンシャルはあります。
しかし、10年間という長期使用にはさまざまな制約やリスクが伴い、それらを受け入れてまで使い続けるメリットがあるかどうかは人それぞれです。
「長く使えば元が取れる」という考えに固執するよりも、操作性や利便性が落ちたと感じた時点で買い替えを検討する方が、結果として満足度の高いスマホライフを送ることができるはずです。